ハチミツみたいな恋じゃなくても。 〜Valentine's Day〜



トサッと軽く音を立て、優しく押し倒された身体。

覆い被さった圭太くんは、いたずらに微笑んで。


「チョコと一緒に、花音のことも食べていい?」

「え、ちょっと待って」

「待たない」

「んっ……!」


再び降ってきた甘い香りが、あたしの思考を鈍らせる。

頭の中がクラクラして、もうどうなってもいいと思ってしまう。


「かわいい」


ゆっくりと圭太くんの首に手を回しつつ、余裕をなくすあたしは、恥ずかしさに小さく頰を膨らます。

すると圭太くんは、フッと苦笑するみたいに、とても幸せそうに……微笑んだ。



あたしの手作りチョコを喜んでくれるって、わかっていた。


だって圭太くんは、ちょっといじわるだけど、誰よりも甘くあたしを愛してくれるから──。