そして、翌日。バレンタイン──。



「花音って実は不器用だよな」


予め予定していた通り、圭太くんの家に来たあたし。

そこで渡した歪なトリュフを見た圭太くんが、クスクスと笑う。


「うるさいっ!だから嫌だったの! 買った方が美味しいのに」


『不器用』とか、昨日も言われたセリフ。

だけど圭太くんに言われるのは恥ずかしくて、自分がみっともなく感じて、あたしは真っ赤になった顔をフイッと背けた。


やっぱり、手作りなんてやめれば良かった。

なんて、思っていると、


「ふーん、じゃあ何でわざわざ手作りにしたわけ?」

「それは……って!」


答えようとしている横から、トリュフに手を伸ばしている圭太くん。


「ん、 今まで食ったチョコの中で一番美味い」

「……うそつき」

「本当だって」


ニコニコと嬉しそうな顔をして、圭太くんはあたしの頭を撫でる。


「マジで旨いよ。てか、花音に本命貰えるとか、今でも夢みたいだし」


目を細め、愛おしそうに歪なトリュフをつまむ圭太くんの姿に、キュッと胸の奥が狭くなる。