バレンタインといえばチョコレート……の、はずだけど、トリュフを手伝ってくれながら、ひかりが完成させたのはプリンだった。
あたしが首を傾げると、
「あぁ……朝日がこれ、好きなんだよね」
ひかりは少し照れたように頬を染めながら、幸せそうにそう呟いた。
「……」
あたしがずっとなりたかった立場にいる彼女に、傷付いたり嫉妬したりすることはない。
だけど、いいな……と、思う。
きっとプリンには、ふたりだけの思い出があって。
あたしはオーソドックスにトリュフを選んだけれど、ひかり達のような思い出なんてない。
それに、そもそも圭太くんがトリュフを好きなのかも、何のお菓子が好きなのかもよく分かっていない。
「……これ、喜んでくれるかな」
歪な形のトリュフを目の前に、ため息混じりにあたしが呟くと、
「そんなの、花音ちゃんが一番よくわかってるでしょ?」
ひかりはニコッと満面の笑みで返事した。