「しょうがないよ、だって、チョコレート作ってくるもん」 「そうかもしれないけどさあ」 彼はくちびるをとがらせる。 「俺に渡したあと本命に渡しに行くのもどうかと思うんだよ。辛くね?」 「……」 「おい黙んな」 「ふふ」 そうじゃない。彼は言って、自転車の前カゴに紙袋を突っ込んだ。何度も思うけれど、“義理チョコレート”だ。ふふふ。