エレベーター

あたしは大きく息を吸い込み、スマホを握りしめた。


そろそろ4人は外へ出た頃だろうか。


校舎から出たタイミングで、充弘からのビデオ通話が届くはずだった。


自分の鞄を肩から下げて準備を整えた時、充弘からの電話が届いた。


一瞬緊張してスマホを落としてしまいそうになるが、どうにか通話ボタンを押す。


画面中央に充弘の顔が映り、その右側に幸生、左側に一穂が見える。


3人の顔を見たら寒気がスッと遠ざかっていく感覚がした。


やっぱり、1人というのはそれだけで気分が変わるものなんだ。


こうして友人たちの顔を見ていれば、どうってことはないのだから。


『美知佳、準備はできてるか?』


「できてるよ」


充弘の言葉にあたしは頷いた。


さすがに、胸のときめきとは違う緊張感を覚え始めていた。


『美知佳、ガンバレー!』


画面上で一穂が元気よく手を振っている。


それを見ると緊張がゆっくりとほどけて、自然と笑顔になっていた。