エレベーター

今回の趣旨は全く別のところにあるのだけれど、理解していない。


「美知佳、本当にやるのか?」


充弘にそう声をかけられて、一瞬にして背筋が伸びた。


「う、うん……」


「気を付けろよ? お前、昨日もボーっとしてたんだし」


「昨日は充弘のお蔭で怪我をしなかったよ。ありがとう」


思い出すだけでも全身がカッと熱くなる。


一方の充弘はなんでもないことのように、表情ひとつ変えていないけれど。


「今日は俺は一緒にいないんだからな?」


「わかってる。十分に気を付けるよ」


そう答えながら充弘からの心配を噛みしめる。


なんとも思っていない子のことなら、ここまで心配しないかもしれない。


でも、表情を変えないということは、そこまで特別な意味も持っていないのかもしれない。


嬉しい半面、悲しい気分になって複雑な気分だ。


しかし、一穂は1人ニヤついた表情をあたしへ向けているのだった。