幸生のお見舞いには行っているかと思ったが、幸生の両親は『最近姿を見ていない』と言っていた。


「幸生があんな目に遭ったのはどうしてだろう?」


「たぶん、男だったからじゃないか? 咲子さんはずっと前原のことを待っていて、そんなときに幸生が自分からエスカレーターの餌食になった。咲子さんは幸生と前原を勘違いしたのかもしれない」


学校へ向かいながら、あたしは一連の出来事を思い出していた。


とても怖くて、残酷な出来事だった。


でも、それももう終わったのだ。


これから先あのエレベーターでなにかが起こることは、もうない。


なんといっても、あのエレベーターは夏休み中に取り壊されることが決まったのだから。


今まで壊すことができなかったのは、取り壊そうとした業者に次々と不幸な出来事が降りかかったからだと、噂が聞こえて来た。


それはきっと本当のことだと思う。


咲子さんがエレベーターの取り壊しを拒否していたのだろう。