きっと咲子さんは前原が再びエレベーターに乗ることを待っていたのだろう。


しかし、前原はあの事件を起こして以来、エレベーターは使わなくなった。


その上年数がたってからエレベーター自体が使用されなくなってしまったのだ。


咲子さんの怨念はエレベーターの中に取り残され、時折それにつられた生徒たちが犠牲になり、怪奇現象としての噂ができた。


そして今……ようやく咲子さんの願いは聞き届けられたのだ。


前原を乗せたエレベーターは激しく上下運動を繰り返し、扉の向こうからは悲痛な悲鳴が聞こえてきていた。


その悲鳴もやがて消えて、エレベーターは何事もなかったかのように、3階で停止したのだった……。