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夜の校舎は外から確認するだけでも不気味な雰囲気が漂っていた。


どの教室も電気がついておらず、闇の中に溶け込んでいる。


あたしたちは昇降口の前で一旦立ち止まると、ガラス戸に手をかけた。


ギィ……それは微かな音を立てて内側へと開いた。


あたしは驚いて充弘と視線を見交わせた。


こんな時間に昇降口が開いているわけがない。


それなのに開いていたということは……そこまで考えて、ゴクリと唾を飲み込んだ。


ゆっくりと校舎へ足を踏み入れる。


校舎内はシンと静まり返っていて、寒々しさを感じた。


つぎはぎの古い校舎へ足を進めるとねばついた空気が体にまとわりついてくる。


その感触に驚いたのか、前原が一瞬息を飲むのが聞こえて来た。


昇降口から入ってすぐの場所にエレベーターが見える。


あたしはその手前で立ちどまった。


「エレベーターがまだ……あったんだな」


前原さんがそう呟いて、一歩、二歩と近づいて行く。


やがてエレベーターの前で立ちどまり、用意してきた花を手向ける……。


その、瞬間だった。


グィーン……チンッ。


いつものあの音が聞こえてきて、あたしは充弘の手を握りしめて後退した。