エレベーター

「それでも咲子さんの気持ちは晴れてない。あなたがちゃんと罪を償わないからだよ」


あたしは前原を睨み付けてそう言った。


何度謝罪をしてたって、自分の死が事故として片付けられているのだ。


被害者の咲子さんからすれば到底許せる出来事ではないだろう。


「な、なんでお前たちにそんなことがわかる!?」


そう言われて、また頭に血が上って行くのを感じた。


こいつは本当に何も知らずに今までのうのうと生きてきたのだろう。


あのエレベーターについての噂も、怪奇現象も、そして今回の被害も、なにもなも知らずに……!


その瞬間、一穂の気持ちが痛いほどに理解できた。


自分たちはこれほど苦しんでいるのだから、原因を作りあげた人間だって苦しむべきだ。


あたしは心からそう思ってしまった。


「教えてあげる。あんたのせいで、あのエレベーターでなにが起こっているのかを……」


あたしは低い声でそう言ったのだった。