エレベーター

入った先の部屋はキッチンだったが、中は閑散としていて物が少なかった。


小さなテーブルに2脚の椅子、コンロの横には空になった弁当箱がおかれていた。


前原は1人暮らしなのかもしれない。


そう思いながら奥へと足を進めていく。


悪いことをしているという罪悪感のせいか、自然と足音を殺し、呼吸音にも気を使ってしまう。


でも、どうせ前原さんと直接話をしなければならいのだから、こそこそする意味はないのだ。


「前原さん、いるんですか?」


声をかけながらキッチン横のドアを開けて中を確認した。


その部屋は6畳ほどのリビングルームになっていて、ガラステーブルとテレビが置かれていた。


テーブルの前にはブルーの座椅子が置かれていて、床には雑誌が散乱している。


前原さんは普段ここにいるのだろう。


しかし、今はその姿は見えなかった。


リビングの左手にもドアが有り、次の部屋へと続いているようだ。


「前原さん?」


また声をかけながらドアに手をかけた……その、瞬間だった。