エレベーター

中から物音も聞こえてこないし、もしかしたらここには戻っていないのかもしれない。


それでも、前原の家なのだから入ってみても損はないはずだった。


なにか、当時の事件に関する決定的な証拠があれば、それを警察へ提出して捜査してもらうことも可能になるかもしれない。


「美知佳、少し離れてろ」


そう言われて身を離すと、充弘は手頃な石を拾って窓に叩きつけた。


古い、格子柄の入った窓はパリンッと音を立てて簡単に砕け散った。


そこから手をいれて鍵を開ける。


周囲にひと気がない場所だったことも幸いして、あたしたちは簡単に前原の家に侵入することができたのだった。