エレベーター

☆☆☆

まさか、一穂があそこまで思い詰めていたなんて考えてもいなかった。


一穂のためにも一刻も早く事件を解決しないといけない。


同時に、幸生にも元気になってもらわないと……。


考えれば考えるほど暗い気持ちになっていく。


しかし、あたしたちには立ち止まっている時間もなかった。


「ここが前原の家だ」


充弘がそう言ったので立ち止まって見上げてみると、そこには小さな平屋の家があった。


築年数もかなり立っているようで、壁のあちこちがヒビ割れている。


さっきの会社で『一穂が暴れ出したのは前原が関係している』と、説明して自宅を教えてもらっておいたのだ。


一穂と前原は直接的には関係ないけれど、あながち嘘でもない。


写真の人が快く住所を教えてくれたのは助かった。


後から色々と質問責めにされるだろうけれど、今は前原に接触することが先決だった。


「玄関から入るの?」


「いや、そんなことをしたら逃げられるだろ」


充弘はそう言うと近場の窓に手をかけた。


しかし、しっかりと施錠されているようだ。