エレベーター

☆☆☆

ビデオ通話を繋げたまま、あたしたちは校舎内へとかけた。


案の定沢山の生徒たちが残っていて、エレベーターの前教室は部活動で賑わっている。


けれど、幸生が見ていた世界は全く違ったはずだ。


誰1人いない廊下、誰1人いない教室、静まり返った校舎内。


そして、シャッターの下りた廊下。


それらは脳裏に焼き付いていたため、安易に思い出すことができた。


「エレベーター動いてないんだ……」


エレベーターの前までやってきて、あたしはそう呟いた。


ボタンを押しても反応はなく、扉も頑丈に閉まったままだ。


だけど幸生は間違いなくこの中にいる。


『助けてくれ!』


スマホから悲鳴が聞こえてきて確認してみると、エレベーターの箱の中で幸生の体がフワリと浮いていた。


一体どういうことだろう?


疑問に感じて目を凝らしてみると、エレベーターが急上昇と急下降を繰り返しているのがわかった。


時折映る回数表示が激しく点滅している。