この日、私は初めて結婚情報誌を買った。

(しゅん)と同棲を始めて、来週で1年になる。


 あの日、俊は言った。

「ずっと莉緒(りお)と一緒にいたいんだ。
 2人で部屋を借りて、一緒に住まないか?」

「それって同棲ってこと?」

「うーん、どっちかっていうと、お試し?
 結婚のための」

嬉しかった。

私たちは同期入社だけど、大卒の私はすでに28歳で、専門学校卒の彼はまだ26歳。

どこかに、私の方が年上だという引け目があったから。

なんとなく男の人は、年下の女の子が好きなんじゃないかっていう気がして。

だから、私は二つ返事で了承した。


 2人とも家賃1万円の独身寮暮らしだったから、貯金はある。

2人で、会社まで乗り換えなしで通勤できる沿線沿いにアパートを探し、彼の名義で契約をした。

ここがそのまま新居になるかもしれない。

そんな未来を想像して、家具や食器などを揃えた。


 あれから、間もなく1年。

私は29歳になった。

そろそろ結婚してもいいんじゃない?

そう思った私は、俊に結婚を意識してもらおうと、付録にピンクの婚姻届の付いた結婚情報誌を買ったのだ。

さりげなく部屋のどこかに置いておこう。

目に留めて、私の気持ちに気づいて欲しい…そんな思いと共に、雑誌の入った紙袋を小脇に抱えて待ち合わせ場所に向かう。