「お、覚えててくれたの……?」
「あったりまえやん。でもさっきはまだ完全に暗くなかったからな、ビリヤードで時間稼ぎ」
へ!?
「やっぱ花火は暗い方が盛り上がるやん」
そりゃそーだけど。
「へー、なぁに虎間 戒。あんたでも随分ロマンチックなこと考えてるのね」とイチが戒の持っていた花火セットを取り上げた。さっきの顔色の悪さが少しだけ和らいでいる。無理をしていることは明らかに分かったが、恐怖を楽しさで上書きしたいんだろう。
「当たり前やん。俺はあんたと違うて愛する女には最高のシチュエーションをプレゼントしたいんや」
「何よ!あたしが響輔に我儘ばっかり言ってるみたいじゃないの」
「そうやないの?」
「まぁまぁ戒さん、一結の我儘は今に始まったわけじゃありまへん。お嬢も楽しみにしてらしたみたいやし」
「何よ!みんな朔羅の味方?」とイチが顔を歪める。あ、いつもイチに戻った。
「ね、姐さん俺も暗い時に花火やりたいッス」とキモ金髪がイチを見た。
「だから姐さんて呼ぶのやめてよ」
ギャァギャァ!皆が言い合っている中、リコとエリナがハラハラした面持ちであたしたちを見守っている。
あーもぅ!
「分かった!確かに今花火したら楽しそうだしな。戒の気遣いもありがてぇ。だから喧嘩はやめろ」
「ほんま?」
戒は嬉しそうににぱっ。
ああ、この笑顔に弱いんだよねあたし。いけないと分かりつつ何でも許せちゃう。でもやっぱ戒の気遣いは嬉しかったり。
「花火、やろうぜ」
素直になれないあたしはぶっきらぼうに言っちゃったけどホントは凄く嬉しかったり。
浜辺に出ると空はとっぷりと暗くなっていた。東京のゴミゴミとした街中ではなく、大きな建物もないせいか空が一層きれいで星がくっきりと浮かんでいる。
流石にこの時間帯浜辺に人は居らず、殆どプライベートビーチみたいなものだ。
「姐さん~!バケツもってきました~」とキモ金髪が海水を汲んだバケツを持ってきて走って来る。リコとエリナはせっせと花火セットの封を切り、それぞれの種類に並べていた。キョウスケとイチは大き目のろうそくを浜辺に立て、
「響輔、もうちょっとちゃんと立てないと風で倒れるわよ」
「分かっとるわ。刺せばいいんやろ刺せば」ブスっ!と音を立ててろうそくを立て、ライターで火を起こしている。キョウスケ……乱暴だな。いつもならもっと丁寧なのに、隣にイチがいるからか??
「みんなで花火っていかにも夏の想い出っぽいよね」とエリナが千里に笑いかけ、千里はぎこちなくも「お、おう。そうだな」と笑っている。
「俺、線香花火好き」とキモ金髪がリコに意味深に笑いかけ、リコが顔を赤くしながら「もぉ~その話は忘れて」とキモ金髪を笑いながら小突いている。
な、何か分からないけど皆すっげぇいい雰囲気なんじゃねぇの?



