「てめぇら、誰だ」あたしが伸した男の襟首を掴み、強引に立たせるとどこかで見た顔だと気付いた。服はグレーでどこか野暮ったい感じ。あちこち汚れてるし。
「おらっ!はよ刑務所戻れや」と戒がさっきキューで倒した男の襟首を掴み、ビリヤード台の上に叩きつける。
刑務所……
あ!”あの”逃げた脱獄犯!?
「今度、女らに手ぇ出してみ?」戒はキューをくるくると手の中で器用に回し、その先をビリヤード台に叩きつけた。キューの先は男の顔すれすれの所で突き刺さっていたが「今は堪忍してやるがな、その目ん玉ぶっつぶしてやるよ」
戒……マジでやりそうで怖いよ。
「新垣さん110番。さっきケータイ持ってたましたよね」とキョウスケが言うと、
「あ、はい!」とエリナは慌ててスカートのポケットからケータイを取り出す。
「そ、そうはさせない!」あたしに襟首を掴まれていた男はあたしの手を乱暴に払いエリナに向かっていった。あたしは慌てて男の後ろの襟首を掴み、ビリヤード台に顔から叩きつけてやった。男はその場でずるずると崩れ落ちた。
エリナはケータイを胸に抱いたままブルブル震えている。
「エリナ!貸して。あたしが電話する」
と手を伸ばすと、「いえ、俺が」とキョウスケがエリナからケータイを引き取った。
「やめろ!」ともう一人、キョウスケが飛び蹴りを食らわした男が腹を押さえてキョウスケに向かっていく。
キョウスケは長い足でもう一度その男の腹に蹴りを食らわせると、今度こそ男は声も上げずあっけなくひっくり返った。
キョウスケの通報のおかげでパトカーが数台すぐに到着して、その頃あたしたちは三人の逃亡犯を小屋にあったロープで三人ぐるぐる巻きに巻いて身動きが取れない状態にしておいた。
逃亡犯の一人によって倒れていたキモ金髪もリコが「大丈夫ですか!」と助け起こし「ごめん、役に立てなくて」と申し訳なさそうにしていたがリコはその場で泣きだし「先輩が怪我しちゃった」と叫んでいた。
「んなぐらいじゃ死なねーよ、ちょっとすりゃ回復すんだろ」と戒は冷たい。「だけどな、俺の大事な弟分に手を出した罪は重いで。覚悟しいや」とキモ金髪を殴った男の頬をそれは強烈な一発のパンチを食らわした。
「兄貴……」とキモ金髪は今にも涙ぐみそうだ。
「兄貴ー!」とキモ金髪は戒に抱き着いていこうとしたが、戒はそれをあっさりスルーしてあたしをぎゅ。
「ごめんな、気づかないフリして。怖かったろ」
いや、怖くはねぇけど。あんな三下。その気になりゃ何とでもなる。でもリコもエリナも居たし、何より戒が狙われてたことが心配で下手に身動きができなかっただけ。
とは可愛くないあたしは言い出せず、こくんと小さく頷くしかできなかった。



