このあたしが…ゲームに夢中になってたから気付かなかったなんて…
誰かがあたしの口を覆って声を出せないようにしていた。結構な力だ。息もできない。目の前の戒&キョウスケはゲームに熱中しているのか気づかない。
「何だ!お前らっ…!」とキモ金髪が声をあげようとしたがそれより早くキモ金髪の腹にパンチが入ってキモ金髪はその場に蹲った。
そろりと振り返るとリコも同じように見知らぬ男に口を塞がれていて、その男はさらにナイフのようなものを手にエリナの喉元に当てている。エリナはナイフを突きつけられ恐怖で声も出ない様子。二人とも声も出せず顔が真っ青だ。
誰だ!?エリナの淫行ストーカー野郎の手下か?いや、そんな感じには思えないが。
全く知らない中年ぐらいの男たち二人組。戒の方をもう一度振り返ると、戒とキョウスケはやはりプレーに夢中になっていて、この状況に全く気付いていない。その戒の背後、こちらも同年代と思われる中年の男が洒落たデザインの花瓶のようなものを戒の頭に掲げている。
か、戒―――――!?
「次、戒さんの番ですよ」
「おうよ」
戒がキューを構える。
何とか声を出したいものの、口を押える力は結構なものだった。
何者か分からなかったが、筋者ではないことは確かだ。
戒がボールにキューを近づける瞬間、戒の頭に花瓶が振り下ろされそうになった。
思わず目を閉じようとしていると、戒はキューを結構な力で後方へ押しやり
「しまった。押すつもりが引いてもうた」
声は冷静だがどこか静かで怒気が含んでいた。戒はそれを首を傾け器用に避けると、花瓶が男の手から離れて派手な音を立てて割れ落ちる。
そしてキューのバット(柄の部分)が男を見事男の鳩尾に命中して、男はひっくり返った。
戒は倒れた男を見て
「何や、お前」とどこまでも冷静。戒はキューを首の後ろに回してトントンしながら倒れた男を見下ろしている。戒……気づいてたんかよ。
キョウスケがテーブルに飛び乗り短い距離を飛び上がるとあたしの口を塞いでいた男に飛び蹴りをくらわした。
「な、何だお前ら!」とリコの口を塞いでいた男がエリナの首にさらにナイフを突きつける。
呼吸が楽になったからな、こっちのもんだ。あたしは回し蹴りで男の手元を狙い撃ち、エリナの首元に突き付けていたナイフが手から落ちカランと乾いた音を立てて落ちた。
「さ、サクラーーー!」エリナは涙を浮かべた目をこちらに向けてきて抱き着いてきた。
「キョウスケ、エリナを頼む」あたしはエリナをキョウスケにエリナを託し、
「その手を離しな」とリコの口を塞いでいる男を睨みつけた。
男はリコを人質に取るつもりらしい。その態勢のままゆっくりと後ずさった。
「ちっ、手間かけさせんじゃねぇよ!」
身を低めて足払いをすると男はあっけなくリコを手放し、その場にひっくり返った。今まで羽交い絞めにされていたリコはバランスを失って倒れそうになったが、エリナを片手に「おっと」とキョウスケが倒れそうになったリコも抱き支えた。
「両手に花?」
キョウスケ!お前空気を読め!



