。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。



戒の手は強引ではなかった。力強さはあるけれど、その指先はどこまでも優しくて―――例えるならお姫さまをエスコートするような王子さまのように。


波打ち際まで来るとビーサンから覗いた足の指先に生ぬるい水の感触を感じた。


昼間あれだけ熱を放っていた空の熱は、海水で冷ましてくれたわけじゃなかった。


戒はその場でひざまずくと、あたしの足にそっと手を伸ばす。あたしのビーサンを脱がし、波がさらっていかない程度の場所に置くと、再びあたしの手を握った。


あたしはまるで―――シンデレラになったような気分だった。


実際、シンデレラの王子さまはガラスの靴を履かせてくれたし、戒は逆のことをしたが、それはどんなステキな王子さまよりスマートで、脱がされてる……と言うことに胸がドキドキと高鳴った。


ザブザブと音を立てて、あたしのつま先が、あたしの足首が、あたしのふくらはぎが、海水に浸っていく度、未知の世界へ足を踏み入れようとする感覚に陥った。


やがて太ももぐらいの水深になると戒はあたしの手から自分の手を離し、その代わりあたしの腰に手を回された。


これ以上は全くの未知の世界だ。


黒くて底が見えない水底が広がっている。得体の知れない世界に足を踏み入れそうであたしは慌てて目を空に向けた。


空は燃えるようなオレンジの光から、まるで藤色を思わせる淡いパープルに変わっていた。