只今のんびり馬車の中です。

エドウィンさんはアルトさんに騎乗しており、前を歩いています。
レオン様は、シリスさんのお腹の赤ちゃんの安全の為に、違う馬さんに騎乗しています。
オリオンという名のイケメンさんでした。
結構お喋りな馬さんで、好みの馬の名前やチャーミングな場所などを延々と話してくれます。
私は少しだけですが面倒になり、聞こえないふりなどをしてしまいました。
やはりカッコ良くても、お喋りな男の人は残念な感じがしますね。馬さんですが。

ミミさんにこっそりその内情を話すと、珍しいミミさんの笑い声を聞いてしまいました。
何かミミさんのツボに入ったのかもしれませんね、今日は良い日ですね。

そんな感じで、初めての馬車の旅を途中旅館に一泊しながら、無事に終えました。
やはり、王族専用馬車は乗り心地が良くて、全然腰など痛くなくウトウトしてしまうほどに、らくで楽しい旅行になりました。

王都に入り、レオン様は何かしらお仕事があるということで先に王宮へ、私は明日の舞踏会への出席の為に、レオン様が用意してくれたドレスを合わせに仕立て屋へ行きます。


「此処が仕立て屋?」

「そうです。レイファ様、此処は王都で人気の仕立て屋ですよ。
ご店主が変わった人なのですが……まあ入りましょうか」

「私、妹達が煌びやかな仕立て屋で仕立てたドレスを、取りに行った事がありまして、少し想像と違ってたので、びっくりしただけです」

「レイファ様は正直ですね」

「じゃあ、俺も仕立て屋に行ってくるから。
レイファは終わっても、ここで待っててくれな、迎えに来るから。

「はい!エドウィンさん」

エドウィンさんは、近くだと言う馴染みの店へ行きました。
エドウィンさんは離宮から離れると、話し方が変化しました。
本人からは、これが本当の自分だから王宮や離宮以外はこれでって言われました。
私は普通に俺と話すエドウィンさんの方が、話しやすいです。


「それでは参りましょう……っとこちらに少し隠れましょうか?」

「どうしたの?ミミさん」


何故か、ミミさんに扉の横の隙間に入れられました。
ミミさんも、入って来て口に手を当てて静かにっとの合図をされましたから、黙ってみます。

すると中から、ドタバタと騒がしい音がだんだん大きくなってきています。


「何なのよ此処は!ふざけてんの?私はマーテェフェル国の次期王妃なのよ!こんなオンボロな仕立て屋なんて初めてよ!!」

「ちょと!次期王妃は私よミルフィ!だけど、サーフウィカ王国の進出気鋭のデザイン力がある、話題のお店って噂を聞いて来たけど…こんな場所私達には似合わないわ!失礼!」

「失礼!」

「ドレスは処分なりなんなりして頂戴な、それでは」

「お母様!もっと煌びやかな仕立て屋が良いわ~~!!」

「そう致しましょう」



私は身体の震えが止まらない……怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い……


「レイファ様行きました。なんだか入る前に中で騒いでいたので、巻き込まれ無くて良かったです…………レイファ様?レイファ様!」


(ねえねえどうしたの?だいじょうぶ?)(ふるえてるよこのこ)(みんな、みんなきてよーこのこたいへん)


「レイファ様!レイファ様!」

「あらあら?騒がしいわね?何事よ~
何これ?どういうことかしらぁ?猫さんがいっぱい居るわねぇ~攻撃的では無く心配そうねえ?まあ良いわ~よいしょっと」


「貴女?レイファ様を抱き上げるなど!」

「仕方ないでしょ?この子歩けないわよ!とにかくお店に入って休ませるわよ。この震えは普通ではないわよ。行くわよ」

「お願い致します」

「はい!賢いわね」


‘‘カランカラン’’


「ここのソファに一旦寝かせるわね」

「レイファ様……どうしてこんな事に?何か原因があるはず……」

「この部屋は使わないから大丈夫よ。
それよりこの子、どうにか対処の仕方知らないの?このままでは精神的に持たないわよ」

「ルラック!勝手に部屋に入ったらダメよ!出てきなさい!」

「アンごめんなさいルラックが勝手に入ってしまって」

「ラティラ大丈夫よ。ルラックは捕まえたわ~ここに病人が居るのよ……えーーーーーーー」




[この先ラティラ視点になります]




私はラティラ、辺境伯夫人よ!
アンの仕立て屋にドレスを合わせに来たのだけれども、いきなりルラックが飛び出して他の部屋に入って行ってしまったの、困った子よ!
本当はダメなのだけど、私は扉を開けて中に入ったわ、そこにはソファで寝ている妖精の様な黒髪の女の子が居たの。

なんと!ルラックがその子にキスをしたのよ…ルラックがその子から離れると、その子の瞳が開いたわ!
なんて綺麗な瞳なの、とても澄んだレッドとゴールドの左右違う瞳なんて初めて見たわ!

瞬間でその瞳は、恐怖に包まれていった、私はとっさにその子をルラックごと抱き締めていた。


(痛いよーラティラ、馬鹿力なんだから!君もなんか言いなよ、妖精の泉に選ばれた者同士なんだから、話し合うんじゃないの?)



「「えっ!?」」