[このお話は一人称にて、進みます]
逃げたい……逃げ出したい。こんな場所から出て行きたいのに……私には勇気が無い。こんな毎日嫌なの……死にたい……死んでしまいたいのに。そんな勇気も無いわたしは……わたしは……
「何サボってんだい!早く朝食の支度するんだよ!タラタラしてると、奥様に言いつけるよ!ふふふ~又ムチを打たれたいのかい?そういえば、先週も大事な皿を割って打たれてたね~あははははは楽しいねアンタが苦しむ所を見るのは」
「申し訳ありません!ナンシーさん、直ぐに準備致しますので」
私は急いでテーブルの上にお皿を並べた。家族の人数分、お父様、お義母さん、シルフィとミルフィの4人分……そこに私の席は無いの。
私は要らない子なのだそうです。
お父様はシルバーの髪に、ブルーの瞳の威圧感漂うお人、お義母様はゴールドの髪に、グリーンの瞳妖艶な美女と噂らしいです。
双子の妹シルフィはゴールドの髪にグリーンの瞳、ミルフィはシルバーの髪にブルーの瞳の、15歳なのに大人の色気漂うそっくり双子。
私は、黒の髪に右眼がレッドで左眼がゴールドなの…
マーテェフェル国には黒髪は居ないし、左右瞳の色が違うなんて人も居ないの…私は生まれた時から蔑まれてきた。
本当のお母様は、私を産んだという事で皆んなに責められ、精神を病んで私が3歳の頃、高台から飛び降りたと聞いています。
今のお義母様は、愛人だったそうです。双子のシルフィとミルフィは私とは1歳しか違わないから……そうですよね。
朝食の準備を終了させ、部屋から退出しようとした時。
「いやぁねぇシルフィわたくし朝から汚い物みちゃったわ~」
「えーわたくしは何も見え無いわよ!わたくし、綺麗な物しか見えない特殊な瞳ですのよ!アンソニー皇子しか見えないのよ~」
「何言ってんのよあんた!アンソニー様はわたくしの物よ!先日もお茶会で微笑んで下さったのよ!」
「そんな事は無くってよ~勘違いよ!ミルフィ!」
私はこのままでは、巻き込まれると思い準備も整ったし、部屋から出ようとしたの、すると…
「ちょと!待ちなさいよ!逃げてんじゃないわよ、腹立つわね!死神の分際で!」
ミルフィが側に置いてあったティーカップを手に持ち、私に向けて投げつけた。そのティカップは私の頭に目掛けて飛んできたので、反射的に手で塞いでしまった。
これまでの経験上、下手に逃げて良い事は一つもなかったのに。
ティカップは、床に落ちて高い音を響かせて割れた。
「朝から何事かしら?騒がしいわね」
お義母様が冷たく微笑みながら、双子の居る近くの扉を開けて入ってきた。
「あらあら、何があったのかしら?シルフィ?ミルフィ?」
「「お母様おはようございます
!レイファが落として割ったのよ」」
「あらまあ!どうしましょう?このティカップは、お父様のお気に入りなのよ!レイファ食後わたくしの 部屋迄いらっしゃい!わかってますわよね!」
「はい」
私は…震える手足を抑え込み、ティカップを回収して別のカップを用意し、使用人が使うキッチンの出入り口用扉から出た。
扉を出て直ぐ目の前には、メイド頭のナンシーがいて。
「どんくさいわね!死神!!今日も楽しいムチ打ちね」
笑顔で私に言って、暖かいパンとスープを持って部屋の中に入って行った。
私は何の為に生きているのかしら、此れからも蔑まれて憎まれて嫌がられて生きていくのかな?
誰も助けてくれない事は、今までの人生で充分学習してる。自分の人生、自分で切り抜けないと駄目なの!わかっているけど、先が見えなくて怖くて進めない!!こんな臆病な私はどうすれば……