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目の前には、無数の手だらけのおぞましい姿の妖怪。

…これは、普通の人間の霊が、心ないヤツの手によって変貌を遂げてしまった姿だった。




菩提さんは、先ほど取り出した小刀の鞘を抜いて、左右それぞれ一本ずつに握る。



「…ナウマクサンマンダポダナン・バザラ・ボク・ケン…」



すると、手に持っていた二つの小刀が同時に光る。

そして、それをおもいっきり床に突き刺して、手を合わせながら、ブツブツと真言を唱える。

その二本の小刀は、床に突き刺さったまま、輝き続けていた。



「伶士くん、結界張ったから。俺の後ろにいて」

「はい…」


返事をすると、振り返っていた菩提さんは優しく笑ってくれる。

…さっきの冷たいオーラはどこへ。

そして、前を向く。

指を二本立てて、呟いた。



「荒ぶる妖の動を封じよ…急急如律令、不動縛」



そう呟いて、その手を妖怪に向かって払う。

すると、妖怪の獰猛なその動きをピタッと止めた。



《ヴアァアぁぁァアーッ!》



妖怪は、バタバタともがいている様子だ。



「なずな、お膳立ては済んだぞ。手筈はいつもと同じだ。攻撃で弱らせたところで調伏…やれ」