……秘密があります

「そもそも俺はそんなに酔ったことはない」

「そんなはずありません」

「何故、お前がそれを決める……?」
と帯刀に訊かれたが、羽未は黙っていた。

 私には秘密があります――。

 誰にも言えませんが。

 課長には最も言えません、と思ったとき、新たにやってきた客が、なんとなくこちらを見ていくのに気がついた。

 はっ、そういえば、此処は店の出入り口に近いっ、と思った羽未は身を乗り出し、小声で言っていた。

「我々は見つかっていませんかね?」
「……誰に?」

 いやいや、社内の人にですよ、と羽未は思う。

 帯刀がそれを気づいたように言ってきた。

「別に誰に見つかってもいいじゃないか。
 結婚するんだから」

 いつ決定事項になったんですか、それ、と羽未は思いながら、また、周囲の笑い声と鍋の音を聞いていた。