帯刀と近くの居酒屋に入った羽未は明るい店内を見回し、

 入ったことない居酒屋だったけど、結構小洒落てるじゃないですか。
 誰と来やがったんですか、と思っていた。

 別にそんな心の声が聞こえたわけでもあるまいが、帯刀は店員に連れて行かれた席に着きながら、
「ときどき同期の連中と来るんだ。
 ……上杉とも」
と言う。

 そうなんだよなー。
 無愛想でとっつきにくくはあるんだけど、周囲から浮いているわけではないんだよなー。

「ちょっと周囲と馴れ合わなさすぎだよなー」
と言っていたあの先輩も、もうちょっと課長と親しく話してみたいと思っているからこそ、あんなこと言ったんだろうし。

 なんだかんだで人は良さそうだからな、と一緒にメニューを見ている帯刀の顔を眺める。

 帯刀はメニューに親の仇《かたき》でも載ってるのかというほどメニューを凝視し、まったくこちらを見ないので、寂しいながらも、ちょっとホッとしていた。