やったっ。
 やっぱり、オートロックだったっ。

 立派なマンションだから、そうだろうとは思っていたのだが。

 よしよし、と安心し、羽未は寝室に戻った。

 帯刀はまだ眠っている。

 はっ、そうだ。
 髪とか落ちてないかなっ、と羽未は殺人現場で目を皿のようにして証拠を探す鑑識のように、床に這いつくばり、フローリングの上を見た。

 うーむ。
 ガムテープとかあればいいんだが。

 っていうか、バスルームとかトイレとかキッチンとかも気になるが、人様のおうちを漁るわけにはいかないしなー。

 自分の記憶がないから、何処をどう移動したのかもわからない。

 そのとき、さっき触れた寝室のノブが目に入った。

 そうだ、指紋っ!

 俺と一夜を共にしたのは誰だっ、とか言って、課長が指紋を調べるかもしれないっ。

 羽未が鞄から取り出したハンカチでノブを拭いていると、背後から声がした。

「そろそろ気が済んだか?」

 たまにしか聞かない、よく通る声だ……。

「……そろそろ気が済んだか? 綾城羽未(あやき うみ)