此処で怯んでは駄目だっ。
奴が来るっ! と帯刀は思っていた。
昼間、会社の廊下で見たのだ。
なにかと自分を敵視してくる上杉士郎と羽未が楽しく二人で、おしるこを買っているところを。
「いやいや、なにも楽しくなかったですけど」
と羽未が聞いていたら言っていただろうが、口には出さなかったので、羽未からの弁解はなかった。
そういえば、さっき、もてあそばれて捨てられたことがあると言っていたが。
「言ってません」
まさか、その相手は上杉士郎っ?
「私の部屋のゴマフアザラシのぬいぐるみなら、もてあそんで持って逃げたことありますけどね」
と帯刀は、いろいろと羽未に突っ込まれそうなことを考えていたのだが。
やはり、口には出さなかったので、なにも訂正してもらえなかった。