すぐに声をかける勇気がないとか言った人が、今、なにか面妖(めんよう)なことを……。

 っていうか、結婚してみるかって、

 あ、こんにちは。
 こんなところで会うなんて、奇遇ですね~。

 そうだな。
 ちょっと結婚してみるか~みたいな感じに言うものなのですか?
と思っていると、帯刀はよくわからない文句を言い出した。

「お前、ちょっとお持ち帰りされることはできるのに、ちょっと結婚することはできないのか」

 普通、できないと思いますね……。

「毎日お持ち帰りされてると思えばいいんじゃないのか」

 いちいち言うこととやることが新しいな、と思いながら、羽未は帯刀を見上げ、訊いてみた。

「あの~、課長は私と結婚したいんですか?」

 怒ってたんじゃなかったのか、と思いながら訊くと、案の定、帯刀は、
「いや」
と言う。