羽未(うみ)は仕事が終わったあと、ふらりと近くの雑貨屋などを見て歩いていた。

 ちょっと可愛い豆皿などを買い、外に出る。

 すると、歩き出した羽未の少し前に、何処かで見たようなスーツ姿の広い背中が見えた。

 春成帯刀(はるな たてわき)だ。

 長身で体格もいいし、何処に居ても、すぐわかる。

 ……うむ。
 あっちには行くまい、と思って、羽未は向きを変え、近くの書店に入っていった。

 旅行雑誌などを見て、ひとり、旅気分に浸り、その雑誌と文庫本を買って外に出ると、帯刀が居た。

 自分の前を歩いている。

 また遭遇してしまった……。

 なにか縁があるようだ。

 なくていいんだが、と思いながら、まっすぐ前を向いて歩いている帯刀に気づかれないうちに、向きを変えて歩き出した。