いやいや、シロさん。
 私は冷たいものが飲みたいのですが、と思いながら見送っていると、士郎は通りすがりの男性社員たちに、

「やろう」
と言いながら、おしるこを配っていた。

 人に押し付けなくても、と思っていたのだが、士郎から、それを受け取った男性社員のひとりが、

「ありがとうございますっ」
と本当に嬉しそうに受け取っていたので、人の好みはわからないもんだな、と思う。

 そちらを眺めながら、なんとなく、おしるこを開けて飲む。

「あちっ」
と騒ぐ羽未を、……いや、あんた、暑いのに、なに飲んでんの、という目で見ながら、上司と一緒に和花(わか)が通っていった。