……秘密があります

 


 結局、わさびを買いにまた行ったコンビニでお惣菜も買ってきて、二人で呑んだ。

 気がついたら、夜もとっぷり更けていて。

「そろそろ送ろう」
と帯刀が立ち上がる。

 帯刀は一緒にタクシーに乗って送ってくれると言ったが、断った。

「大丈夫ですよ」

 エントランスを出ながら羽未は微笑む。

 泡盛まで呑んだのに、結局、まったく酔わなかったのだ。

「そうか。
 まあ、遅くに送っていったら、お母さんが気を使われるだろうからな」
と帯刀が言ったとき、ちょうどタクシーがロータリーに入ってくるのが見えた。

「今日はいろいろとお世話になりました」
と頭を下げて乗ろうとしたとき、帯刀が羽未の手を引っ張った。

「羽未」
と抱き寄せたあとで、キスしてくる。

 間近に羽未の瞳を見つめ、
「……また明日」
と囁いたあとで、帯刀は手を離した。

 羽未は無言でタクシーに乗り、ぺこりと頭を下げる。

 そういうのに慣れているのか、運転手さんは特になにも言わずに、
「何処までですか」
と普通に訊いてきた。

 ……いやいやいやっ。

 いやいやいやいやっ!
 私は慣れてませんけどっ!?
と思いながら、羽未は震える声で住所を告げる。

 車が走り出し、慌てて振り返った。