「いやまあ、そんときは、みんなドッと笑って終わったんだけど。
 あんたもネタっぽく笑って言ってたから。

 ……でもそのあと、しばらくして、二人ともいつの間にか消えてたからさ」

 ひーっ。
 私そのようなこと言いましたかねっ?

 もう二度と酒は呑むまい、と決意を固めていると、
「あらあらあら」
と近くで声がした。

 見ると、受付の美女、大橋杏果(おおはし きょうか)がカップの珈琲を手に立っていた。

「まあまあ、呑み会のとき、そんな周りを見てる余裕があったとは。
 ずっと芳賀(はが)くんや楡崎(にれざき)くんに張り付いてるだけかと思ってたわ~」

「あんたこそ、フラれたのに、まだ芳賀の方見てたわけ?
 私がずっと側に居るの見てるなんて~」
と阿佐子が笑顔で言い返している。

 ひいいいいっ。

 猛虎(もうこ)たちの争いに、羽未たち小ネズミたちは珈琲を手に他のテーブルに飛ぶように逃げた。