「いや、でもですね。
 それはこう、いろんな流れとしてのキスで。

 それ単体というのはないかもですよ……」
とか、もごもご言って、

「あんた、なに言ってんの?」
と言われてしまうが。

 そういう行為の途中のキスと、単体のキスはまた違う緊張があるというか、と羽未は思っていたのだが。

 いや、待てよ、と思い出す。

 酒が入っていたせいで、帯刀だけでなく、自分も夢だったのではと思ってしまうくらい曖昧な部分があるのだが。

 そういえば、最初のとき、課長の部屋に入ってすぐ、ラグに座って。

 課長がまっすぐ私を見つめてきて。

 そっと身を乗り出し、キスをしてきた……

 ような気がする。

 忘れていた記憶を蘇らせたせいで、まるで今、初めてその出来事を体験したかのような気分になり、みんなの前で真っ赤になってしまう。

 ……そんなに見つめられたら、私のこと好きなんじゃないかとか思ってしまうではないですかっ、と思ったとき、阿佐子が言ってきた。