「隣の部屋で資料まとめてたのよね。
 例の蜘蛛で騒ぎ出したのが聞こえてきたんだけど、一緒に居た子が助けに行こうとしたから、止めたわ。

 いいところだからって」
と言うが、

 いや、課長的には止めにきて欲しかったかもですよ、と羽未は思う。

 どうも課長は蜘蛛が苦手なようだったし……。

 だが、苦手なのに頑張ってくれたところに、よりキュンと来た。

 それは阿佐子もわかっていたようで、
「あんなにあんたのために頑張ったのよ。
 キスくらいさせてあげればよかったじゃない」
と帯刀の肩を持ち、言ってくる。 

「課長とするの初めてでもないでしょうに」
と言われ、

 いや、そもそも他の人ともないですけどね……と羽未は思っていた。