こうして玄関まで送りに来た日永は、あの小会議室は他の生徒には秘密だと話した。
「今日はたまたま空いていたけど。3年が勉強に使う部屋なんですよ」
「そうですか」
「残念!」
「今度使う時は私に相談してくださいね。ん?どうしました、桜田さん」
「……いえ。その」
「なあに?どうしたの」
日暮れの玄関で靴を履いた美友は家までの道のりがうる覚えだと不安そうに言い出した。これを見た日永は慌ててどこかに連絡していた。
そんな美友に二人は話しかけていた。
「朝はどうやって来たの?」
「まさか車で送り迎えとか?」
「……二人はもっと話を続けて!あ、もしもし……」
日永教師の様子を不思議に思った二人だったが、不安そうな美友が心配なので必死に尋ねてみた。
「じゃ、じゃあ、住所は?」
「目印になる建物は?」
「……たぶん平気よ?ただ暗いので別の風景に見えただけ、あ?」
「何してんだよ」
「……どうやら大丈夫のようだね」