教師はまず自己紹介を始めた。
「私は日永薫と言います。担当は国語ですが、質問ありますか?」
若く細身のイケメン教師にこのクラスになってラッキーと思っていた元気女子はさっそく質問をしてみた。
「先生は独身ですか?」
キャーーと黄色い声が飛び交う教室で彼は眼鏡を押し上げていた。
「そうです。今のうちに聞いてください。もう2度と答えないので、はい、君!」
こんな日永に女子生徒は好きな女性のタイプ、休みの過ごし方などプライベートなことを聞いてきた。
「好きなタイプはプライベートな事を聞いてこない女性です。休日は写経です」
こんな意地悪で返した日永は自分をじっと見ている一番前の席の美友と目が合った。
「いかがしましたか?」
「……日永先生の写経は般若心経ですか?実は私はこの春、法華経をスタートさせたんです……」