「でもそんな中で、仁菜子ちゃんが妹になって守るものができた柊は変わった。面倒くさいって言いながらも仁菜子ちゃんの傍だけは離れなかった」

「そりゃ、あの時は俺しかいなかったし」

「ううん。柊はお兄ちゃんだからって理由であそこまで傍にはいないよ。妹とかじゃなくて、仁菜子ちゃんだったからでしょ」


たまに親父の再婚相手が別の人で、仁菜じゃない他の女の子が妹になっていたらどうだったんだろうと考える。

仁菜みたいに新しい環境に慣れずに泣いていても、泣き止むまで俺は隣にいた?

楽しいことを見つけにいこうと、手を繋いで街を歩いた?

傷つけたくないと、庇ってまで火傷を負った?


志乃の言うとおり、それは妹だからじゃない。

ぜんぶ、仁菜だからやったことだ。


「色んな意味で応援はしないけど、もう女遊びはやめな。どうせ誰も仁菜子ちゃんの代わりにはなれないんだし、意味ないでしょ。そんなの」

「……お前ってさ」

「なによ」

「なんかすげえ俺よりも大人だな」


俺は仁菜への想いすら自分で受け止めきれずに処理できてないっていうのに、志乃はそんな俺のことも冷静に見ている。


「大人なんかじゃないよ。ただ誰よりも柊のことをわかってるだけ」

志乃はさらりと垂れ下がる髪を耳にかけた。膝の上で喉を鳴らしていたララはいつの間にか安心したように寝ていた。


「俺のこと、お前が産んだのかもな」

「は?私、お母さんじゃないし!」

「でも母性強そうじゃん」

「セクハラ」

「なにがセクハラなんだよ」

そんな言い合いをしてるうちに晩ごはんの支度ができて、俺は遠慮なく食べて帰った。