学校に着いたあと、騒がしいクラスメイトたちを横目に俺は自分の席へと座った。
くじ引きで運悪く一番前になってしまったけれど、窓際なので多少は我慢できる。
「なあ。一年のあゆみちゃんとさっき喋っちゃった」
鼻の下を伸ばして俺の席に近づいてきたのは、友達の倉木だった。
倉木とは高校で知り合って仲良くなった。
「いやあ、あゆみちゃんマジで可愛いわ」
倉木は窓のサッシの部分に寄りかかり、身ぶり手振りで狙っている後輩との会話を説明していた。
「可愛いか?」
倉木が狙っている後輩の顔は知っている。小柄ではあるけれど、顔はべつに普通って感じだ。
「そりゃ、お前には美人の嫁がいるから誰を見ても霞んで見えるだろうよ」
「美人の嫁って誰?」
「境井に決まってんじゃん」
倉木はそう言って、志乃がいるほうに目を向ける。
志乃とは三年になっても同じクラスになった。というか、幼稚園から小、中、高と何度もクラス替えがあったけれど離れたことはない。
宝くじで100万円を当てるより、すごい確率だと思う。
「嫁じゃねーよ。ただの幼なじみ」
「そんだけ長くいりゃ、嫁みたいなもんだろ。境井ほどよく出来た女はいないと思うよ。スタイルもいいし、綺麗だし、気立ても申し分ない。なによりお前のことをよく理解してるだろ」
「倉木がそんなに志乃のことを評価してるなんて知らなかったよ」
「評価してないのは、お前くらいだよ」
べつに志乃を評価してないわけじゃない。
ガキの頃から知っている仲だけど、あいつに欠点なんてひとつもない。
運動神経もいいし、料理もできるし、なにより人が自然と集まってくるほど慕われている。
性格も顔も良くて男子からも人気があるのに、志乃は男を作らない。
俺と一緒にいすぎて嫁なんて言われてしまってることが、足かせになっているのかもしれない。



