ごめん。ぜんぶ、恋だった。



「あ、そういえば今度私も志乃ちゃんの家に遊びに行っていい?お兄ちゃんからララの話聞いて会いたくなったんだ」

「うん?」

「ララがお兄ちゃんの頬っぺた引っ掻いたんでしょ?」

仁菜の言葉に志乃は俺の引っ掻き傷をじっと見つめた。

目が合って状況を察したように「ああ、そうそう。ほら、柊って昔からララに嫌われてるから」と、笑って合わせてくれていた。


俺が志乃のことをよく知っているように、志乃も俺のことをよく知っている。

視線を重ねただけで意思疎通できるなんて、18年の付き合いは伊達(だて)じゃない。


「また女の子、泣かせたんでしょ」

仁菜がクラスメイトに声をかけられて俺たちから離れた途端に、深いため息をつかれた。


「泣かせてない。向こうが勝手に泣いたんだよ」

「うわ、死ねって言われたでしょ」 

「うん、言われた」

でも悪いとは思ってない。だって誘ってきたのは向こうだし、俺が甘い言葉を使って騙したわけじゃないし。 


「学校でも成績優秀で、おまけに女子からクールな王子様なんてあだ名をつけられている柊がまさか女の子を泣かせまくっているなんてね」

「今に始まったことじゃないだろ」

「開き直って言うことですかね?」

なにを言われようと本当のことだ。 
 

小学生の時は可愛いと言われ、中学生ではカッコいいと言われ、高校生ではなぜか綺麗だと言われる。

付き合わないけど時間を一緒に過ごすことは、中学一年生の夏から始まって、そういう俺のことも志乃はぜんぶ知っている。

『いつか刺されるよ』と言われることはあっても、『やめなよ』と止められたことは一度もない。


「仁菜子ちゃんにはバレないようにしなよ。一応理想のお兄ちゃんなんだからさ」

「言われなくても、そのつもりだよ」 

別に犯罪を犯してるわけじゃないけど、バレるようなヘマはしない。