ごめん。ぜんぶ、恋だった。



「……お兄ちゃん?」

ダメだと言い聞かせるほど、気持ちが抑えられなくなる。

どうしよう。今日はマズイと感じた瞬間に、家のインターホンが鳴った。


まるで現実に引き戻されたみたいに俺はハッと我に返る。

……もしかして親父たちが早く帰ってきたのか?

カメラ付きのドアホンを確認すると、そこには志乃が映っていた。


「なに、どうしたの?」

通話ボタンを使わずに、そのまま玄関のドアを開けた。


「今日、おじさんたちいないんでしょ?晩ごはん困ってるんじゃないかと思ってさ」

志乃の母親とうちの母さんは週に一回ほどランチをしに行くほど仲良しなので、うちの情報はすぐにこうして志乃にも伝わる。


「あれ、志乃ちゃん?」

「仁菜子ちゃん、やっほー」

志乃はそのまま遠慮もなく、うちに上がった。


「あれ、もしかしてなにか作ろうとしてた?」

志乃はすぐにまな板に放置されている玉ねぎに気づいた。


「うん。今週の日曜日がお父さんの誕生日だから、お兄ちゃんと試作もかねて料理を作ってたんだ」

「そうなんだ!他にはなにを作るの?」

「唐揚げとポテトサラダ。あ、唐揚げはもう漬け込んで冷蔵庫に入れてあるよ」

「じゃあ、私もその試作に混ざってもいい?まさかなにか作ってると思わなかったから、うちから晩ごはんのおかずを少し持ってきちゃったんだけど……」

「わあ!志乃ちゃんの春巻きだ!」

仁菜の食いしん坊スイッチが入る。


おそらく志乃は俺たちのために他にもなにか晩ごはんを作ってくれる予定だったのかもしれない。

考えてみれば両親が不在の時はいつも志乃が家のことをやってくれていた。

うちのことは住んでいる俺たちよりも志乃のほうが詳しいと言っても大袈裟じゃない。