ごめん。ぜんぶ、恋だった。




「わあ、すごい!ちゃんとみじん切りになってる!」

「当たり前だろ」

仁菜に任せていたらいつになってもみじん切りが終わらないので、この体勢のまま俺は次々と玉ねぎに包丁を入れていった。


触れ合っている手も、俺の腕にすっぽりと収まっている身体も、つむじが見える背丈も、なにもかもが小さい。

……心臓が、少し騒がしくなってきた。


「ねえ、お兄ちゃん。昔さ、こうして一緒にキッチンに立ったこと覚えてる?」

「いつの話?」

「ほら、お兄ちゃんが私のせいで火傷した時」


玉ねぎが目に滲みたのか、それともあの時のことを思い出しているのか、包丁を握る仁菜の手が弱くなった。


たしかあの時も、仁菜にせがまれて俺は料理の手伝いをしていた。

今考えれば小学生だった俺たちだけで油を使ってはいけなかったんだけど、どうしても揚げたてのドーナツが食べたいと言う仁菜のために俺は生地を作って、それを油の中に入れた。

たぶん、カッコつけたかったんだ。


揚げ物なんてしたことがなかったのに、ドーナツ作りなんて余裕だよと仁菜の前で大人ぶった。

だから、バチが当たった。

火の弱め方も知らずにずっと強火のままにして、生地を次々と入れていった結果、油が跳ねて、それに驚いて、鍋の持ち手にひじが当たって、高温の油をぶちまけた。

俺は自分のことよりも隣にいた仁菜のことをとっさに(かば)った。幸い火事にはならずに済んだけれど、俺は肩に火傷を負った。