ごめん。ぜんぶ、恋だった。



次の日の夕方。俺と仁菜はキッチンに並んでいた。

『今日は寄り道しないで、まっすぐに帰ってきてね』と仁菜からお願いされたのは今朝のこと。

なんでも親父の誕生日に作ってあげる料理の練習をしたいらしい。

母さんはそんな仁菜に頼まれて、今日は仕事終わりの親父と外で晩ごはんを食べてくるそうだ。


「やっぱりハンバーグにはコーンを入れたほうがいいかな?」

「子供じゃないんだから、コーンはないだろ」

「えー私はコーン入りのハンバーグ大好きだよ」

「親父のための料理じゃねーのかよ」

色々と張り切っている仁菜だけど、料理の腕は小学生レベル。いや、今時の小学生のほうができるんじゃないかと思うほど、仁菜の料理は下手だし、不味い。


とりあえず当日はハンバーグと唐揚げと、親父が好きなポテトサラダを作りたいそうだ。

ハンバーグのタネを作るために玉ねぎを仁菜に切らせているけれど……手元が危なっかしくて見てられない。

「貸せ、俺がやる」

「やだ。私だってできるもん」

「お前は包丁の持ち方がおかしいんだよ」

そう言って、仁菜の背後に回った。


「そんなに(りき)んで持たなくても大丈夫だから。あと、玉ねぎに添えてる手は猫の手。絶対に指を出すなよ」

「う、うん」

教えるようにして自分の手を仁菜の手に重ねる。そのまま、包丁を動かして玉ねぎを半分以上一緒に切った。