仁菜のことを縛る権利なんて俺にはない。
そんなのは兄妹の域を越えている。
頭ではわかっているんだ。
でも心が追いついてこない。
仁菜のことを子供扱いしてるくせに、ガキなのは俺のほう。
「帰り……」
「え?」
〝帰りが心配だから図書室で勉強しながら待ってる〟
そんな言葉をぐっと、喉の奥に押し込んだ。
またお兄ちゃんがいなくても大丈夫だと言われることが怖かった。
また速水くんと帰るからって断られることが……たまらなく嫌だった。
「帰り、アイス買っとくよ」
「やった!絶対に忘れないでよね」
仁菜はそう言って、階段下から廊下に出た。仁菜の足音が次第に遠退いていく中で、俺は飲みかけだった牛乳を飲む。
早く大人になりたい。
あの家を出て、一人立ちをして、親孝行ができるくらい立派になれたら……。
この気持ちを許してもらえるだろうか。
心が通じ合えなくても、せめて伝えることぐらい……許されるだろうか。



