「邪魔」
仁菜を含む一年の集団の前でわざと足を止めて、睨みつけた。
「え、あ。す、すみません」
誰も口答えすることはなく、みんな慌てたように端に寄った。
「ごめんね。怯えないで話を続けてね」
後輩をフォローするように志乃は優しく声をかけて、不機嫌な俺の背中をぐいぐいと押して前に進ませようとしてくる。
仁菜と目が合って、その表情は怒っていた。
兄貴である俺が横暴なことをすれば、仁菜の立場だって悪くなる。「お兄ちゃんがごめんね」と、俺が去ったあとで謝る光景は容易く想像できた。
「またイライラしてるね」
結局、俺は志乃に誘導されるように東校舎に入った。
「べつにしてねーし」
「たしかに真ん中にいたけど、私たちが避ければ普通に通れたじゃん」
「避けたくなかったんだよ」
「だから、なんで」
俺は志乃の質問には答えずに、そのままパソコン室のドアを開けた。
仁菜のことを可愛いと思う男はいくらでもいる。仁菜がカッコいいと思う男もいるかもしれない。
そう考えただけで余裕がなくなるなんて……本気でヤバいと思う。



