ごめん。ぜんぶ、恋だった。



放課後。俺は図書室に寄った。本棚が並んでいる通路を通りすぎて、カウンター席へと座る。

予定がない時はここで二時間ほど勉強してから帰る。とくに切羽詰まってやらなきゃいけない理由はないけど、綺麗なことだけを言うのなら自分の将来のため。

汚いことを言えば……。


「……あの、橋本さんのお兄さんですよね?」

声がして振り向くと、そこには見知らぬ男が立っていた。

学年ごとに区別するものはないけれど、ブレザーの襟にきちんと校章のバッジを付けているということは、おそらく一年だと思う。


「そうだけど、なに?」

仁菜のクラスメイトだろうか。一年にしては身長が高くて、体つきもしっかりとしていた。


「竹下先生からプリントを預かっていたんですけど、橋本さんに渡すのを忘れてしまって」

たしか、竹下は仁菜の担任じゃない。なんのプリントだろうと受け取ると、そこには図書委員の仕事内容が書かれていた。


「渡してもらえませんか?あ、俺は橋本さんと同じ図書委員で隣の席の速水克也(はやみかつや)と言います」

……図書委員と隣の席、ね。

いかにも図書委員を選びそうな好青年って感じの雰囲気で、俺に対しても礼儀正しいやつだった。


「わかった。渡しておくよ」

「ありがとうございます!」

「あとさ、お兄さん呼びはやめて」

「あ、ですよね。すみません!じゃあ、橋本先輩って呼んでいいですか?」

「……まあ、呼ぶ用事があれば」

きっとここに志乃がいたらもっと愛想よくしろって怒られるに違いない。

でも後輩に好かれても仕方ないし、こういう爽やかな男は眩しくて苦手だ。