昼食を終えたあとは、また絶叫系に戻った。と言っても食ったホットドッグを戻すわけにはいかないので、仁菜がひとりで乗りにいっていた。
迷宮迷路に、ミラーハウス。てんとう虫のモノレールにも一緒に乗った。
「お兄ちゃーん!」
小さい子に混ざってメリーゴーランドを楽しんでいる仁菜が手を振っている。
まだ家族としての形がぎこちなかった頃、親父と母さんと仁菜と俺でこの遊園地に来た。
まだ母さんのことも母さんと呼べなくて。仁菜のことを俺は「おい」とか「ねえ」って、呼んでいた。
今日のように仁菜は絶叫系に乗って、俺は気持ち悪くなって。次に入ったお化け屋敷で仁菜は泣きわめいて、へそを曲げてしまった。
『おい、せっかく遊園地に来てるんだからさっさと泣き止めよ』
俺はメソメソしてる仁菜にムカついて、冷たいことばかりを言っていた。そして機嫌を直すために乗ったものが、このメリーゴーランドだ。
こんなガキみたいなものには恥ずかしくて乗れないと、ガキだったくせに俺は乗らずに、回り続けている馬たちを外から見ていた。
『お兄ちゃーん!』
ピンク色の馬に乗った仁菜が、初めて俺のことを〝お兄ちゃん〟と呼んだ。
泣き虫でうざったいと感じていたのに、お兄ちゃんと俺のことを呼ぶ仁菜のことが可愛いと思った。
大事にしたいと思った。
大切にしようと思った。
きっとあの瞬間に、仁菜は俺の妹になったのだ。



