ごめん。ぜんぶ、恋だった。



風呂に入って自分の部屋にいく前に、俺は隣のドアの前に立った。

――コンコン。


「はい」

「俺。開けていい?」

「うん」

合図とともにドアを開ける。

仁菜の部屋は俺の知らないうちにすっかり女の子らしくなっていて、甘い香りが漂っていた。


「俺のこと部屋に入れていいの?」

まるで仁菜は俺が来ることをわかっていたような表情をしている。


「入れちゃダメなの?」 

「だって、なんかされるかもしれねーじゃん」

「丁寧にノックする人がなに言ってんの」


たしかにそうだ。プライバシーもなんにもない薄い壁ひとつ(へだ)てた隣の部屋で、仁菜になにかをする気ならとっくにしている。


――『柊はその一線を越えたいの?仁菜子ちゃんとどうなりたいの?』

志乃の問いかけが頭の中で聞こえた気がした。


仁菜は俺に帰ってきてと言ってくれた。

だから次に歩み寄るのは俺の番だ。
 

「お前さ、今週の日曜って暇?」 

「え、うん。特に予定はないけど……」

「じゃあ、俺と出掛けない?」

仁菜のことを誘うのは初めてだ。だって仁菜は誘わなくても俺に付いてきた。小さく俺の洋服を掴んで、どこまででも後を追って。
 

「ふたりで行きたい場所があるんだ」


これは始まりか。それとも終わりか。

俺はこじらせていた気持ちの答えを出そうとしていた。