ごめん。ぜんぶ、恋だった。



「午後の授業、めんどくせーな」

気づけば、そろそろ予鈴が鳴る時間になっていた。


「なら、このままここにいようよ」

「お前といても暇じゃん」

「はー?なにそれ、ひどくない?」

口を尖らせる志乃を横目に、俺は重たい腰を上げた。

まだぶつぶつと文句を言っている志乃に気だるい返事をしながら、俺たちは校舎に戻るために移動をはじめる。と、その時……。

ぐしゃり。

なにかを踏んだ気がして確認すると、そこには先ほどのセミの脱け殻があった。


「今4月なのに、なんでセミの脱け殻なんてあるんだろう?」

「ハルゼミだろ。そこにアカマツの木があるじゃん」

「柊って、無駄にそういうの詳しいよね」

「無駄は余計だ」


形あるものを潰してしまった罪悪感はあった。でも同時にカサカサと乾いた音が気持ちよくて、俺はスニーカーの底で何度も擦る。

足を上げると、脱け殻は原形がないくらい粉々になってた。


俺は昔から壊すということに対して抵抗がない。

もちろん法に触れるようなことではなく、高く積み上げたブロックを倒したり、砂場で誰かか作った城を崩したり、うまくできた粘土を潰したりと、その程度。


完成した喜びよりも、壊すことに爽快感を覚えるようなヤバい子供だった俺は、先月に誕生日を迎えて18歳になった。

まだ酒は飲めないし、タバコも吸えないけれど、結婚は許されている歳。

未成年として制限はあっても、ほとんどのことはひとりでできるし、もう子供じゃない。

だから一応、壊してはいけないものの分別くらいはつく。