ごめん。ぜんぶ、恋だった。



仁菜と俺の血は繋がっていない。もちろんそのことは志乃も知っている。

家族になったのは今から10年前のことで、俺が小学三年生の8歳、仁菜が小学一年生の6歳の時だった。

初めて仁菜を見た時、本気で男の子だと間違えるほどの見た目をしていた。


『この人と再婚を考えている』

なに不自由なく男手ひとつで育てられていた頃に、親父が綺麗な女性を家に連れてきて、その後ろに隠れて立っていたのが、仁菜だった。

俺の母親は早くに病気で死んでしまって、仁菜の父親もまた不慮の事故により他界していた。

そんな境遇から両親は出逢った頃から互いを意識していたようで、トントン拍子に籍を入れた。


親父は25年ローンで一軒家を買い、そこで四人暮らしが始まった。

最初は戸惑うことばかりだったけれど、狭かったアパートを出て、念願だった自分の部屋を持つこともできた。

新しい母さんは料理上手でなんでも作ってくれるし、病気で死んでしまった母への記憶がおぼろげだったこともあって、俺はすんなりと色々なことを受け入れることができていた。


『やだ。新しい家も新しいパパもいらない』

一方で、仁菜はそんなことを言いながら、ずっとメソメソとしていた。まるで拾われてきた子猫のように隅っこで膝を抱えて。
 

そんな仁菜のことを毎朝手を繋いで小学校へと連れていっていたのは俺だった。

母さんも専業主婦ではなかったし、親父も『歳が近い柊のほうが打ち解けられるだろう』と言って、強制的に俺は仁菜と一緒にいることが多くなった。


正直、最初は面倒だと思ってた。

友達と遊びたい日も仁菜がひとりで帰れないから遊べないし、家の中ではゲームじゃなく、ぬいぐるみ遊びだった。

俺も別に妹なんてほしくなったし、と思いながらも、仁菜は次第に心を開いて慕ってくれるようになった。


――『お兄ちゃん』

他の誰にも見せない笑顔を向けてくれた。

どこに行くにも、ちょろちょろと付いてきた。

母性なんてないけれど、俺が守ってやらなくちゃと責任感も生まれた。

それから10年。

メソメソしていた仁菜は16歳になった。

本当に時間の流れは早いなと思う。