ごめん。ぜんぶ、恋だった。



速水くんからされた告白の余韻が消えないまま家帰った。

玄関のドアを開けた瞬間から漂ってくる甘い匂い。

……もしかして。慌ててリビングを確認すると、「おかえり」という声が飛んできた。

それはキッチンに立っているお母さんからだった。

……一瞬だけ、お兄ちゃんかもしれないと思った。玄関にある靴を見ればわかることなのに、そんな余裕さえなかった。


「スーパーでホットケーキミックスが安かったから、たまにはドーナツでも作ろうかなって思って」

ああ、だから私は勘違いしたんだ。

この甘い匂いは前にも嗅いだことがあったから。


「私も手伝うよ」

「あら、珍しいわね」

キッチンの中に入ると、より一層あの日のことを強く思い出した。それは私のせいでお兄ちゃんが火傷をした時のことだ。

油がお兄ちゃんの肩にかかったあと、すぐにお母さんが帰ってきて、そのまま病院に向かった。

幸い程度は軽かったけれど、もしも顔にかかって目をケガしていたら失明していたかもしれないと医者から言われたそうだ。


もちろん大人がいない時にドーナツを作ろうとしたことは、お母さんからもお父さんからもこっぴどく叱られた。

私が作ってとせがんだことが原因だったのに、お兄ちゃんは最後までそれを両親には言わなかった。