「ごめん菜月…」

震えた美月の声が私の背中に話しかける。

何が起きたのか今だに理解できない私は、黙って服部くんの後ろ姿をみつめたまま立ち尽くしていた。

「…どうして美月がここにいるの…。美月本当は叶くんじゃなくて服部くんのことが好きだったの?」

「違うよ!
私はただ…私と菜月をちゃんと見分けてくれてるから…。
だから!
もう一度まぐれじゃなくて私たちを見分けてほしかったの…。
二人の邪魔をしたかったわけじゃない。

中学の時みたいなこともう起きてほしくなかったから…。

ごめん…余計なことして…」

途中から美月の言葉は私の耳には入ってこなくて…。

翌日から通学電車で彼の姿を見かけることはなくなり、美月とはっきり区別がつくように私の髪はショートになり、コンタクトの使用をやめて眼鏡が日常になっていた。 

得意のスリーポイントもきまらなくなり、バスケのインターハイ予選が始まっていたが、調子の悪い私は、都大会からスタメンからはずされた。